第2話

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今夜行くのは止めようと思っていた。 でも顔を見るだけ、それだけだと思い直してチャイムを鳴らした。 まだ濡れた髪の澪は、それだけで俺の心を甘く揺らす。 コーヒーを飲んだら帰ろう。と思い直して澪の横顔を見つめた。 片岡の話を持ち出したのは自分なのに、なぜかむきになって弁解する澪に動揺した。 しかも、自分は嫌われてる、と澪は言う。 こんな誤解を解いてやる必要はない。 それにもう聞きたくない。 ほら、まただ。 駄目だと思っているのに、こうしていとも簡単に俺は、澪に手を伸ばしてしまう。 今夜は駄目だ。俺は普通じゃない。嫉妬でかなりおかしくなってる。 今夜は・・・・駄目だ・・・・。 澪・・・・・お前を壊してしまいそうだ。 でも、このやり場のない不安だけは解消させてくれるか・・・・? 「澪・・・・お前は俺のものだ」 こうして言葉にして確認して、お前が愛らしく頷くのを見て、やっと安心してる。 こんな情けない男を許してくれ・・・・・澪。 ああ、駄目だ。やっぱり抱き締めた腕は弛めることができない。 奪う、と言っていいほど荒々しく唇を重ねた。誰にも渡さない。いや、渡したくない。 澪の唇は甘い。とろけていく程甘い。俺はどこまで堕ちていけるのだろう。 膝から崩れ落ちようとする澪を抱き上げて、囁いた。 「澪・・・・・愛してる」 どうしよう・・・・・・・もう、どうしようもないほど、お前が・・・・好きだ・・・・・。 ********** <澪目線> 気だるさの中で目が覚めた。 雨の音が聞こえる。 腕を伸ばして時計を手に取ると、脇腹のあたりに軽く、痛みが走った。 3:25 帰ったんだ、亮太。 それはそうだ。もともと約束してた訳じゃなかったんだし。 泊まってくれるわけ・・・・ないし。 冷蔵庫からミネラルウォーターを出してきてひと口飲んだ。 身体中のあちこちが、なんとなく痛い。筋肉痛みたいだ。 ふと思いついて、着ていたTシャツをめくってみた。 暗闇に慣れた目が、姿見に写る胸にいくつかの痣を見つけた。 よく見ると、腕にもある。この分だと、脚や背中も危ないかも・・・・。 まあ、服で隠れるところ・・・・という程度には気を使ってくれているらしい。 自分の所有物だぞっていうしるし・・・・かな。 雨の音を聞きながらぼんやり考えていた。
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