第2話

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昨夜の亮太は変だった。いつもあのひとは優しいのに。いや、優しくなかった訳じゃないけど、どこか違っていた。 そう、いつもあのひとは優しい。 口調も、眼差しも、指先も、そして唇も。 そんな優しさが好きだ。 何かあったんだろうか・・・?そういえば来た時から少し変だったかも・・・・。 ふと見ると、携帯が青く光っているのに気づいた。 亮太からのメール・・・・。 『よく眠ってるので起こさないで帰ります。身体、大丈夫かな。ちょっと乱暴だった。ちゃんと反省してるから。ごめん』 ふふっと笑った。 ほら、優しいんだから。 また、謝ってる・・・・。 亮太の余韻と降り続く雨が、私を眠らせてくれそうになかった。 あなたは今頃、私でない誰かの隣で、眠りについた頃だろうか・・・・・? 雨の夜は好きだ。泣いてもいいよ、と言ってくれている気がする。 もう少しだけ、泣いてもいいかな・・・・・・。 *********** <再度の亮太目線> あの日から片岡が気になって仕方ない。あんな風に俺に告白したということは、俺の気持ちを知っているということだ。 澪を奪われるかもしれないという恐怖は、じわじわと俺の心を蝕んでいく。 それとなく澪に尋ねても、相変わらず意地悪です。と言うだけで変化はない。 このままなら、片岡の好意は澪に伝わらない。 どうする気だ。片岡・・・・。 夜になって、ひと息つこうと休憩室で缶コーヒーを手にしていると、根元さんが入ってきた。 「お疲れさまです」 「あ・・・お疲れさまです」 澪に手を出してしまった今は、何となく気まずい。 根元さんは平然と言った。 「課長・・・片岡くんと何かありました?」 「え・・・・何故ですか?」 「課長・・・顔に出ますから。宣戦布告でもされました?」 くすくすと笑われた。 やっぱり、読まれてる・・・。 「強敵ですね」 「はい」 思わず頷いてしまった。 「課長」 根元さんは急に真面目な顔をした。 「このままだと、誰も幸せにはなりません。もちろん稲葉も」 「はい・・・・」 わかってます。多分。 「傷つく覚悟と、傷つける覚悟を決めないと」 根元さんはにっこり笑った。 「何かを、いつか捨てなければ、得られないものもあります」 「・・・・・はい」 根元さんは微笑んだままだった。 この人も、何かを、いつか捨てたのだろうか・・・・?
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