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昨夜の亮太は変だった。いつもあのひとは優しいのに。いや、優しくなかった訳じゃないけど、どこか違っていた。
そう、いつもあのひとは優しい。
口調も、眼差しも、指先も、そして唇も。
そんな優しさが好きだ。
何かあったんだろうか・・・?そういえば来た時から少し変だったかも・・・・。
ふと見ると、携帯が青く光っているのに気づいた。
亮太からのメール・・・・。
『よく眠ってるので起こさないで帰ります。身体、大丈夫かな。ちょっと乱暴だった。ちゃんと反省してるから。ごめん』
ふふっと笑った。
ほら、優しいんだから。
また、謝ってる・・・・。
亮太の余韻と降り続く雨が、私を眠らせてくれそうになかった。
あなたは今頃、私でない誰かの隣で、眠りについた頃だろうか・・・・・?
雨の夜は好きだ。泣いてもいいよ、と言ってくれている気がする。
もう少しだけ、泣いてもいいかな・・・・・・。
***********
<再度の亮太目線>
あの日から片岡が気になって仕方ない。あんな風に俺に告白したということは、俺の気持ちを知っているということだ。
澪を奪われるかもしれないという恐怖は、じわじわと俺の心を蝕んでいく。
それとなく澪に尋ねても、相変わらず意地悪です。と言うだけで変化はない。
このままなら、片岡の好意は澪に伝わらない。
どうする気だ。片岡・・・・。
夜になって、ひと息つこうと休憩室で缶コーヒーを手にしていると、根元さんが入ってきた。
「お疲れさまです」
「あ・・・お疲れさまです」
澪に手を出してしまった今は、何となく気まずい。
根元さんは平然と言った。
「課長・・・片岡くんと何かありました?」
「え・・・・何故ですか?」
「課長・・・顔に出ますから。宣戦布告でもされました?」
くすくすと笑われた。
やっぱり、読まれてる・・・。
「強敵ですね」
「はい」
思わず頷いてしまった。
「課長」
根元さんは急に真面目な顔をした。
「このままだと、誰も幸せにはなりません。もちろん稲葉も」
「はい・・・・」
わかってます。多分。
「傷つく覚悟と、傷つける覚悟を決めないと」
根元さんはにっこり笑った。
「何かを、いつか捨てなければ、得られないものもあります」
「・・・・・はい」
根元さんは微笑んだままだった。
この人も、何かを、いつか捨てたのだろうか・・・・?
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