プロローグ

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   金属バットを持った教師。  その傍らに控えるユニフォーム姿の高校生が三人。  いや、もう一人。  高校の野球部のグラウンドにしては、設備が整っている。そのレフトの定位置に、泥まみれのユニフォームをまとった少年がいた。  彼の周りには、無数の硬式球が転がっている。  レフトの守備の特訓中。  夕暮れ時という事もあり、端から見ればそのような見方も出来る。しかし、レフトの守備位置にいる少年の姿は、少しばかり様子がおかしい。  疲労し泥まみれなのは、まだ分かるというもの。  しかし唇の端からは血が滴り、練習用のユニフォームも、ところどころ血で汚れている。  他にも、出血箇所があるのか。  だが練習を始めてから、一度も処置した様子は無い。 「もう一丁、来い」  その掛け声も、小さく弱々しい。  教師は、無言でノックする。だが少年は、立ち尽くすばかりでボールを追えなかった。
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