第一話

9/9
前へ
/9ページ
次へ
 チョークの欠片であれば黒板のところに隠せば見つからないので、欠片の問題はひとまず解決です。  次に、壊した残りについてですが、これは恐らく、布をかけて棚に置いていたのではないでしょうか。布は、他の作品からひっぺがすなり、制服のスカーフを使うなり、方法はいろいろです。そして、壊してしまった作品の代わりに、歴代の美術部の誰かが作ったチョークを置いたのでしょう。  なので、麻野先輩が写真を撮った時には、もう先輩の作品は壊れていたと思われます  後は、麻野先輩がいなくなったら元に戻して、帰宅してしまえば完了です」  あぁ、説明めんどくさかった。喉乾いた。 「・・・明日、部活で訊いてみるわ。ありがと時多くん、じゃあね」 「悪い、じゃあな」  稲崎先輩は、はっきりと傷付いた顔をしていた。そりゃあそうだろう、自分の後輩が犯人だったんだから 「じゃあ白さん、僕たちも帰ろうか」 「そうですね・・・って、あ!」  ・・・。  稲崎先輩たち、鍵締めしないで帰っちゃった。  結局、鍵締めは僕たちでした。 「時多さん、稲崎先輩は、ちょっと卑怯です」 「そうかもしれないね」  ひょっとすると、犯人を認めたくなかっただけかもしれない。 「・・・実は、美術部にはあるおまじないが伝えられているんですよ」  へぇ、初耳だなぁ。 「先輩の作品の一部を、肌身離さず持っていると、いつかその先輩を超える作品が作れるようになる、とか」  ・・・。  白さんは、分かっていたのだろうか?  分かっていたのなら、なんであの時ーー、 「時多さんは、”おまじない”って、どんな字を書くか知っていますか?」 「さぁ・・・」 「おまじないは”お呪い”って書くんですよ。・・・おまじないへの思いが強すぎれば、それは、もう、」  呪いと呼ぶのかもしれない。 「ワタシは、美術部の中での呪いなんて、・・・嫌、です」  それで、白さんは黙っていられなかったのか。  ・・・分かっていなかったのは、僕の方かもしれないな。 「・・・あ!!」 「は、白さん!?」 「ワタシ、今日はどこに帰ればいいんでしょうか!?」 「・・・・・・。母さんに相談してみようか」 「あ、ありがとうございます!」 「まだ決まったわけじゃないんだよ?・・・多分いいって言うだろうけど」    ・・・僕たちには、事件解決よりこっちの方があってるかもな。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加