第1話

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~夢者~ 高校三年の春、まだ桜が咲いていた頃、 「ふぁ~、寝みぃ」 始業式の長い校長の話を聞きながらそんなことを言っていると後ろから小声で 「おい、勇、むしゃって知ってるか?」 俺のことをいさ何て呼ぶのはこいつしかいない、こいつは俺の小学校時代からの友人で名を 伊井岳 順平(いいおか じゅんぺい)といい噂が大好物みたいなやつだ。 眠かったのに、と思いながら俺は 「知ってるよ武者震いとかのむしゃだろ、それがどうした?」 「ちげ~よ、ゆめにものって書くむしゃだよ」 何言ってンだコイツ。また根も葉もない噂か何かだろうと思ったが暇潰しに聞いてみようと思った。飽きたら途中で寝てしまえばいいんだと思ったからだ。 すると頼んでもないのに奴は勝手に語りだした。聞こうと思っていたからいいけど・・・ 「何か噂では夢者って他人の夢の中に入って色々やるらしいんだよ」 「おいおい、んなバカな話があるかよ今回は嘘だな」 思わず途中で割り込んでしまったが、順平はお構い無しにこう続けた 「話を最後まで聞けよ、そんでその夢者ってのがどうやら河木田先輩なんだって!」 河木田先輩とは、河木田 亮二(かわきた りょうじ)さんのことで俺らの一個上の先輩だ。 河木田先輩は昔から堅苦しい優等生だ。そんな人がそんな馬鹿馬鹿しいことするわけないと思った。 「順平そんな馬鹿馬鹿しい話集めないで勉強しろ」 この時はそうやって下らない話だと思って受け流した。 そう、この時までは・・・・・・・・・。
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