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運転席の男が話し終えると車は静かに道路脇に停車した。
「着きましたよ。」
『着きましたよって…
5分も走ってないし。
場所教えたら自分で来るのに…』
ミヤは車内から外を見回しながら自分の居場所を確かめていた。
カズ達の店から数ブロック離れた飲み屋街。
中心街から離れているせいで人通りも
さっきまであれほどいたタクシーもほとんど見当たらない。
若いミヤからしたら
かなりマニアックな通りだ。
「どうぞ。」
男は後部座席のドアを開けてくれる。
軽く会釈をしながら車を降りるミヤ。
目の前には白い看板に青い字で《Rain blue》。
初めて見る看板だった。
「皆さん、中に居るんでどうぞ。」
男に言われミヤは扉の前に立つと
ゆっくりドアノブに手をかけた。
扉を開けると同時に店内の煙草の煙がミヤの体にまとわり付く。
『わっ…凄っ…煙い』
見るからに濁った空気の奥に、
見覚えのあるシルエットが動いている…
よく見ると仁が右手でミヤに手招きしていた。
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