第五話 現の残火

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一瞬だけ固まったようにこっちを見た相川、きゅうにうつむいて泣き出したんだ。 え、な、なんで? こんくらいの冗談、いっつも言ってたじゃん! そんで、相川いっつもウケてたじゃん! 今のだって 『うわ、ひどっ』 とか言いつつ、バカ笑いするとこじゃないの? 「そ……そう、だよ……ね…………わたし、バカだから……」 スンスン、スンスン、ちょっと待ってよ、相川だって、冗談―――― バカでウケねらいな嘘だって分かってるから、いつも笑ってたんでしょ? それなのに何で泣くんだよ!? 「あ、いや……」 ちょっと、これどうしたら良い? うわ、あたまに変な汗出てきた。 「べ、別に相川がバカってことじゃなくて、えっと……なんていうか、教科書見るのがバカっていうか、そ、その……問5は中尊寺だから、はい、よし、これで全部埋まったじゃん!」 ダメだ、自分でも何いってんのかわかんないし。 ――――気づいたらおれ、教室飛び出してた。 途中、センセーに鉢合わせしたけど、ダッシュで逃げた。 かんいっぱつだと思った。 だって、あんな状況見つかったら絶対怒られる。 『友達泣かすな』 って。 センセー、そういうのはめちゃくちゃ怒るから。 おれが泣かしたみたい……いや、おれが泣かしたんだけど、そんなつもり無かったし。 とにかく、急いで部室に行こうと思った。 部活に混じっちゃえば、とりあえず今日は説教されずに済むから。 部活して、帰って、明日の朝なら相川泣き止んでるだろうし、明日謝れば良いよね? そんで、相川に説教軽くなるように言ってもらおう。 いや、だってセンセー怒るとヤバいから。 だからおれ、バット振りながらも、明日どうやって謝ろうかずっと考えてた。 そしたらさ――――
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