第五話 現の残火

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そんなの、気付いてるに決まってるじゃん。 おれ、相川のこと好きだもん。 見てたから分かるよ。 おれ、結構わかってるよ、相川のこと。 社会だけ異常に成績悪いのは、授業中ボケッとセンセーばっか見てるから。 最初は苦手なんかなと思ったけど、三崎に聞いたら、小学校の時は別にそんな事無かったらしいし。 居残り勉強だって木曜日外すのは、センセーが会議だからでしょ? それから、居残り勉強の時、センセーにお団子潰されてちょっと赤くなってるのも知ってるよ。 センセーにからかわれてる時の相川、おれのバカ発言の時と全然違うしさ。 おれにはバカ笑いで、センセーには照れ笑い。 分かりやすすぎるし。 でもさ、今までは笑ってくれるだけマシだと思って過ごしてたんだよ? だって、センセーに比べたら、おれなんかガキだし、バカだし――― センセー、おれから見たってカッコいい大人だもん。 憧れるのはわかるからさ。 だから、バカ笑いでも仕方ないと思ってた。 それなのに、バカ笑いまでしてくれないってどういう事? 今だって泣いてたくせに、センセーの後ろに居るとき、へらへらしてさ! 腹立つ! 腹立つ! 腹立つ! 「センセーなんか好きになったって仕方ないじゃん!」 あー、ダメだなおれ。 センセー、やっぱりおれ無理みたい。 『女泣かすな』っての難しいよ。 「大人が、子どもなんか相手にするわけないの分かっ」 「分かってるよ、そんなこと!」 え。 おれは次の言葉を無くした。
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