第五話 現の残火

14/18
前へ
/35ページ
次へ
ボロボロ涙溢しながら、でも真っ直ぐこっちを見てる相川。 こいつ、こんな反論する奴だっけ?なんて、ポカンと口を開けたまま、本当に次の言葉が出てこない。 「入江くんに言われなくても分かってるよ!だから髪も切ったし、居残り勉強だってしなくて良いように頑張っんだもん」 「…………」 「でも点数足りなくて、なんとか30点なるように、話し掛けたくなかったけどセンセイに頼んだ。だけど、三角しかくれなくて」 「…………」 「仕方ないからセンセイ居ない木曜日選んだのに、入江くんがいけないんだよ!」 「…………」 「わたし、もうセンセイを見ないように、迷惑かけないようにしてるのに、入江くんが"髪の毛と脳ミソ"の話なんかするから……わたし、わたしっ」 涙でぐちゃぐちゃの顔がキッとこっちを睨む。 こんな相川初めて見る。 いつも、のほほんと悩みなんか無いみたいにしてるのに、取り乱してわめき散らす様子は尋常じゃないよ。 …………。 ただ一言、「ごめん」としか言えなかった。 ――案の定、次の日から口を聞いてもらえなくなった。 まあ、あんなに怒らせたから仕方ないとは思うけど、やっぱり凹む。 バカ笑いどころか、挨拶さえ返してもらえなくなるなんて、もう終わってる。 だけどさ、やっぱり気になるわけなんだよね相川。 居残りしなくて良いように勉強がんばるとか言いながら、今だってずっとセンセーの方ばっか見て、ノート取ってないし。 センセー、明智光秀好きだから、さっきチラッとほそくした、細川ガラシャとか絶対テストに出そうだけど大丈夫なの? …………? 今、一瞬だけセンセーと目が合った? 「入江、何見てんの?余所見せずに集中して聞けよー」 いや、それ相川に言ってよセンセー。 おれ、別に相川見ながらでもテスト完璧だし。 てか、何気にセンセーって相川に甘い気がする。 だって、実力テストの「平仮名は三角」って、いつもなら、 『漢字で書けなきゃ意味無い』 って認めないよね? だいたい、センセーって三角とか曖昧な採点しなかった気がするんだけど。 …………。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加