第五話 現の残火

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**** 「相川、これ」 おれの手元を見て、相川が首を傾げた。 口を聞いてもらえなくなってから1ヶ月。 けっきょくその間もずっとうわのそらで、センセーばっか見てる相川に無性に腹が立ってイラつくわけ。 「入江くんのせい」とかキレられて、口も聞いてもらえないおれはなんなの? ただ、それをそのままぶつけたら進歩がないから黙ってるんだけど。 …………。 って、今こっちを見上げてるのって相川だよね? こいつ、こんなに睫毛長かったっけ?というか、その、さ。 「ノートがどうかしたの?」 「あ、いや……テストの点数上げたいみたいだから」 「…………」 「ほら、出そうなとこ、マーカー引いてあるから」 なかなか手を出そうとしない相川。 「いいから、これ」 おれは相川の机に、バンッとノートを置いて席に戻った。 あーもう、何でこんなに動揺してんだよおれ。 チラッと見た相川の背中。 相川が相川に見えなかったというか、相川がきれいに見えたとかマジでおかしい。
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