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「ありがとう。未来(ミライ)」
母はそう言って笑顔で息を引き取った。
その顔は、私が記憶している母の笑顔の中でも一番と言って良いほど穏やかで幸せそうだった。
まだ50に手が届いたばかりの若さで、大して良い人生だったとも思えない母が微笑みながら逝くなんて……。
最後に何か良い事でもあった?お母さん。
答えるはずも無い母にそう問い掛け、そっと母の額に触れる。
どれくらいの間そうしていただろうか。
冷たくなった母の左手の薬指に銀色の指輪を見たのは、葬儀屋さんが来る寸前の事だった。
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