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男は仏壇に線香をあげ、静かに目を閉じた。
仏壇には、まだ納骨を済ませていない母の遺骨が乗せられいる。
遺影は父の古びた写真の横に真新しい母のもの。
40代の父と50代の母は、どちらも笑ってはいない。
「ありがとうございます」
私は合掌をといた男に向かって、そう言って頭を下げた。
「母とはどういった……」
母との2人暮らし。
最近は滅多に一緒に囲む事も無かった小さなダイニングテーブルの上にお茶を置く。
すると男は「どうも」と言って軽く頭を下げ、
「いいえ。僕はどちらかと言うとお父様の知り合いです。勿論昔、おばさんにも会った事があります。君にも……」
と答えた。
意外な答えに、私は言葉を失った。
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