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20:52
家のアパートまで辿り着き、鍵を探しながら階段を上ると、家のドアの前には見覚えのある人影があった。
「せん…ぱい?」
「アヤ!」
うずくまっていたイレヴンは、パッと顔をあげると、駆け寄りアヤに抱きついた。
「ちょっと、先輩?!何ですか突然っ。」
アヤはジタバタとするが、イレヴンは離さなかった。
「アヤ、なんで電話出てくんなかったの?
つーか、パパさんは?一緒じゃねーの?」
「それは・・・」
普段嘘をつかないアヤは、嘘をつくとバレバレだ。
ズキン、ズキンと頭が痛い。視界もボヤけているように見える。目、また悪くなったかな。
「アヤ、答えてくれよ!」
「大きな声出さないで下さい。近所迷惑ですから。
家、入りましょう。」
「…わかった。」
ガチャッ。鍵を開け、家に入った。
「お邪魔しまーす。」
「どうぞ、適当に座ってください。お茶入れますね。」
「悪いな、ありがとう。」
前にも一度部屋に入れてもらったことあるけど、女の子の部屋って緊張するな。
部屋を見回すと、机の上に手紙があった。手紙は不用心にも開きっぱなしで(まあ、自分の部屋だから用心してないだろうけども)ついつい、手紙を読んでしまった。
「お待たせしました。」
アヤはお茶を入れると部屋に戻ってきた。
「先輩…?」
「ごめん、アヤ。この手紙ちょっと読んじゃった。」
イレヴンはアヤの父から届いた手紙を手に持ち、アヤに見せた。
「!!。」
「やっぱ今日は、パパさん帰って来てなかったんだな。」
イレヴンは、少し寂しそうに笑った。
「…ごめんなさい。」
「何で嘘ついたの?」
「予定が無いと、寂しい人だと思われるのが嫌だったので。」
「お前、普段そんなの気にしないじゃんか。他に理由があったんだろ?」
「・・・・無いですよ。」
「嘘つけ。目、泳いでるぞ。」
「・・・・・・。」
「俺にクリスマス誘われるのが嫌だった?」
「・・・・・・。」アヤは下を向いたまま。
「話してくんないと、分かんないよ、アヤ。」
イレヴンはアヤの肩を掴み、問いかけた。
少しの沈黙の後、アヤの瞳から、一筋の涙がこぼれた。
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