聖なる夜にひとり

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12月20日。22:49 もうすぐクリスマスですね! 聖なる夜、大切な人と一緒に居たいって思いますよね♪ 恋人、家族、友達… あなたは誰と過ごしますか? ふとつけたラジオは、どこのチャンネルに合わせてもクリスマスの話題で持ちきりだ。 ブチッ アヤはラジオの電源を落とした。 クリスマス。去年までは父と一緒に過ごしてきた。 イエス・キリストの降誕祭なんて興味もなかったが、 毎年、父が嬉しそうにケーキを買って帰ってくるので、ささやかなプレゼント交換後、それを一緒に食べるのが恒例行事であった。 喜ぶ父の顔を見るのが好きだった。 父は考古学者だ。遺跡発掘調査に関わる仕事をしている。 研究所でデスクワークしている時もあれば、 現地へ赴き、現場を指揮する監督者の時もある。 現在は長期に渡る発掘調査のため、しばらく家に帰って来ていない。 手紙はほぼ毎日届くが、顔を見たのは半年ぐらい前だったと思う。 家では、甘えてべったりとした姿しか見たことなかったので 父が真面目に仕事に取り組む姿など信じられなかったのだが 以前、父の仕事仲間でもある友人が家に泊まりに来た際に、 「アヤちゃんのパパはすごい人なんだよ~。 セイシロウさんはね、鋭い観察眼と豊富な知識を持った学者さんなんだ。 いつも彼の行動力や地層を愛する気持ちに、元気をもらっているよ!」 そんな風に言ってくれたのを、今でも覚えている。 ちなみに母は、私が物心つく頃には居なかった。 生きているか、死んでいるのかも、私は知らない。 幼い頃、一度だけ父に母のことを尋ねたことがあったが、 いつもウザったいくらい元気な父に、悲しそうな顔をさせてしまった。 とても後悔した。 image=479178006.jpg
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