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けれど、その時海斗は笑って、彼方に言った。 「俺が抜けても、負けるなんてありえない。って・・・」 私は、感動した。 そんなに、海斗が彼方のことを信頼していたなんて思ってなかったから。 「その思い込みは、試合が終わった後に気が付きました。」 試合は、彼方のハットトリックで勝った。 そして、退場になった海斗は控室で、泣いていた。 「泣いていた?」 「はい。これは後から知ったんですけど、実は海斗のご両親は離婚していて、彼方とのサッカーはそれが最後だったんです。」 光太郎先輩は、私の話を聞いて深く頷いた。 「つまり、最後の最後まで一緒に戦えなかったのが、悔しかった・・・ということ?」 「普通はそう考えますよね・・・けど、本当は・・本当は・・っ!」 「咲!?」 私は、あの時の恐怖や裏切りを思い出して、視界が滲んだ。 「海斗は・・っ、彼方のことが、憎かったんですっ!」 そう。控室で泣いている海斗を見て、彼方と私は気まずくも、海斗に話しかけた。 そしたら、 「・・・お前は、何でもうまくいっていいなって海斗が言ったんです。」 光太郎先輩は、もう何も言わずに静かに話を聞いてくれていた。 それが、少し・・いやかなり、安心できた。
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