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「いいか!これから、俺たちの冬が始まるんだ!」
控室では、部員・・・いや選手達が円陣を組んで、気を引き締めていた。
「一瞬たりとも、気を抜くな!!」
キャプテンの光太郎先輩は、カッコよく声かけをしている。
「そして、俺たちは必ず全国に行くぞ!!」
「「「「オー!!」」」」
試合前になると、さすがに緊張感が半端ない。
試合に出ない私達までもが、ドキドキしている。
「咲。」
彼方が、珍しく話しかけてきた。
いつもは、集中するため誰とも話はしないのだ。
「どうしたの?」
「俺、絶対に海斗に勝つから。ちゃんと見てて。」
彼方は、真剣な面持ちで宣言をしたので、私はそれに応えなければならない。
「わかった。ちゃんと見てるから。負けたら承知しないわよ?」
「もちろん!」
すると、
「咲せんぱぁーい!!」
と、緊張感の欠片もない声が聞こえた。
「何よ、亜貴?」
「緊張してるんで、抱きしめてください。」
「丁重にお断りします。」
私は、いつも通りのセクハラ発言をさらりと受け流した。
「てか、亜貴って緊張しないでしょ?」
「あ、バレました?」
亜貴は、ペロッと舌を出した。
そんな動作も可愛いと言われているのだろう。
「すごいよね。なんで緊張しないかなぁ?」
私は、尊敬のまなざしで亜貴を見つめた。
亜貴は、不思議そうな顔をしている。
「なんでって・・・簡単ですよ。」
亜貴は、ベンチから立ち上がった。
立って並ぶと、私のほうが身長が低くなってしまう。
私、160以上あるんだけどね・・・
少し、ガッカリしていると、ふんわりと体が包まれた。
「なっ!?亜貴!?」
私は、亜貴に抱きしめられてしまったらしい。
「先輩・・・緊張しないのはね、それだけ自信があるからです。」
と、そっと耳元で囁かれた。
自信か・・・
「亜貴はすごいね。ホントに。」
「あぁ。こんなとこでいちゃつくなんて、スゴイとしか言いようがないな。」
外野からそんな声が聞こえると、私達はあっという間に引き離された。
「げ。戻ってきたんスか、光太郎先輩・・・」
「悪かったな、戻って来ちゃって。」
どうやら、引き離したのは光太郎先輩らしい。
「もー!亜貴、ダメだって。光太郎ったら、イライラモード入っちゃうんだからさぁ。めんどくさいの、コレ。」
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