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「試合を始めます。」 審判の人の合図により、コイントスが行われた。 どうやら、先行はこちらのようだ。 「では、試合開始!」 ホイッスルの音がフィールドに鳴り響いた瞬間、光太郎先輩が前方にボールを蹴り、彼方にパスした。 キックオフだ。 「彼方!とりあえず様子見ながら、慎重に進め!!」 光太郎先輩は、彼方にアドバイスしながら走り続ける。 「分かってます!」 彼方は、順調にドリブルをしている。 が、 「久しぶりだな、彼方。」 彼方のマークは、海斗だ。 なので、シュートを決めることは、かなり難しい。 「あぁ。お前と勝負する日が来るとは思わなかったよ。」 彼方と海斗は、ボールを取り合いながら会話をしている。 「そうだな。だが、俺はもう、昔のスタイルでサッカーはしていない。」 そう言った海斗は、次の瞬間、彼方が必死で守っていたボールを、奪い取った。 「何!?」 彼方は、驚いた様子で海斗を追いかける。 が、海斗のスピードに追いつくことができていない。 「くそっ!・・・なんでだよ!」 海斗は、こちらのディフェンスをあっさり抜くと、ゴールにシュートを放った。 そして、そのシュートは呆気なくゴールの中に収まった。 「海斗ッ!よくやった!」 「この調子でどんどん行けよ!!」 向こうのチームは、海斗がシュートを決めたことにより、モチベーションが上がったようだった。 だが、こちらは・・・ 「・・・おい、どういうことだ?」 「アイツ、守りじゃなかったのか?!」 などと、不安と疑問が見え隠れしていた。 彼方も呆然としている。 「なんで?・・・」 ベンチにいる菜々も、困惑しているようだ。 けれど、私は不思議なほどに冷静だった。 確か・・・お兄ちゃんの試合でもこういうこと、あった。
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