嵐を呼ぶ女

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数時間前。 私、鈴宮里桜(すずみやりお)は駅のホームで英単語帳を真剣に見ていた。 この一年で全てが決まると言っても過言ではない。 故に高校三年生らしい振る舞いを常日頃心掛ける必要がある。 ・・・とはいうものの、私だって花の女子高生。 人並みに彼氏だっている。 私の隣で欠伸をしながら電車を待つ茶髪の背高男子、氷川昇平(ひかわしょうへい)は 私の彼氏だ。 昇平は私の視線に気づくと、切れ長の目を細めて微笑む。 「来ないね、電車」 「・・・うん」 私は昇平が何か言う度、胸の高鳴りを感じ、何も言えなくなる。 でも喋る努力はする。 話を振ってみたり、逸らしてみたり・・・ 「福岡まで30分の好立地なのに、30分間隔で運行するのってどうよ! ていうか、次の模試自信ある?」 昇平は苦笑する。 「ないな~。最近勉強してないし」 里桜は昇平に肘鉄砲を食らわせ、ぶすっとした表情をする。 「そんなこと言って! ノートと参考書は書きこみすぎて真っ黒だったじゃない!? ・・・私、来年、同じ大学行けるかな?」 俯く里桜の肩に昇平はそっと手を触れる。 里桜が昇平の顔を見ると、昇平はフッと微笑む。 「里桜なら行けるって! 一緒に頑張ろうよ! 分からないところはいつでも教えるから!」 里桜は昇平の優しさが嬉しくなり、頬を赤らめる。 「・・・ありがとう。 ちょっと元気出た。 じゃあ、明日質問100はまとめてくるから!」 「100!?」 昇平がそう言って吹き出した時、 甲高い金属音を響かせながらライム色の車体に赤い線の入った電車が到着する。 里桜と昇平は手を繋ぎ、一緒に乗車した。 恋人であり、同士でもある二人は、互いの駅に着くまでの短い時間を大切に且つ楽しく過ごした。
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