prologue

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昔は旧華族の別邸だった、というレンガ造りの重厚な建物。 「この豪邸、嵐には強いかもしれないけど、大地震には弱そう。隠れた活断層があったらアウトだね」 雑学女王のアリサが呟く。ネガティブ発言が多いのがタマにキズだ。 「地震なんか来ないよ。灯りがつかないだけじゃない」 クラス委員長のルイがなだめた。 「そ、一晩ガマンすればなんとかなる。ロウソクかなんかない?」 体育会系の姉御キャラで、卒業式に制服のボタンを全部(女子の)後輩に取られた、という伝説を残したチアキが男前に仕切った。 「災害時の非常用セットが廊下の物入れにあるはずよ。ウララ、取ってきて」 ツグミは自分で動く気はないらしい。 「でも…真っ暗だし」 消え入りそうなウララの声。 「ケータイで照らせば大丈夫だよ。一緒にいこう」 私は立ち上がった。 暗闇に目が慣れる、という言葉はあるけど、ホントのホントに真っ暗闇で、誰がどこにいるか全然わからない。 お約束のように圏外のケータイがこんなトコで役立つなんて。 ウララはツグミの親友なのに、いつもお嬢様気質のツグミの後について侍女みたいにあれこれ使われている。 ツグミに悪気はないのはわかっているのだが、ウララにはいつも同情している。
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