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「停電はしても電話線は無事、って昔のミステリーのネタでよくあるじゃん。固定電話でふもとに連絡取れるんじゃないかな」
へぇ、そうなんだ。
アリサはホントに色んなコトを知っている……普段役に立つかどうかは別として。
「そうなんだ。じゃ、そうする」
ツグミが天然ぶりを発揮してポケットからスマホを出す。
「固定電話、って言ったでしょ。スマホは圏外」
ルイが明るくツッコんで、アイミ、サヤカ他のみんなもしばらくぶりに声を出して笑った。
この時はまだ、
(小林さん、SOS出したら、ヒーローみたいに助けに来てくれないかな……)というおバカな妄想が膨らむ余裕が私にもあった。
「でもさ、考えてみたら、停電してるだけじゃん。キャンプだと思えば楽しいかも。みんなでロウソク立てて、怪談ごっこでもしない?」
「な…何言ってんの、ツグミ」
私は思わず言い返した。
お嬢様育ちゆえの怖いもの知らずか、強がりか。
「確かに停電くらいじゃ死なないかもしれないけど、小林さんには状況を知らせておくべきじゃないかな。万一、ってこともあるし」
チアキがきっぱり言い切った。
「万一、って何?パパやママに連絡がいったら、絶対家に帰されちゃう」
そっちか……。やれやれ。
「一応、電話だけでもした方がいいよ。心配してるかもしれないし」
8人の中で私と一番仲のいいアイミが遠慮がちに言った。アイミは一見おとなしそうだが意外としっかりしている。
「そうだね。小林さんだっけ。何番?」
ルイが、古い映画でしか見たことないような、アンティークな作りの電話機に近寄り、華奢な受話器をとった。
小林さんに連絡って……美味しい役、取られちゃったかな。
「知らない。家族でここに来たときは、泊まり込んで執事とメイド長をしてもらってるもの。電話する必要ないじゃない」
「「 ………… 」」
一同、見事に沈黙。
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