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「ナツ、私達の分」
アイミの声に、我に返った。
乾パンと残り数ミリのペットボトルを私に渡しながらアイミが笑う。
普段、癒し系のアイミのいざという時の気丈さ、力強さにどれだけ救われたろう。
私達はわずかな水と粉の塊を噛み締めるように時間をかけて味わった。
「……伝わったかな……」
いつの間にか独り言を呟いていた私に、アイミが「大丈夫」と小さな声で答えてくれた。
「ツグミは偽物。ツグミに投票して」
乾パンを包んでいたのは、ノートの切れ端。ウララとサヤカの包み紙には、二度書きの蛍光ペンで私がメッセージを書いた。
これは、私とアイミがアリサの残した推理のヒントから必死に考え出した作戦だった。
そして、無線機の通信日誌。
書かれた日付は昭和。途中まで埋められ、後は白紙。
……ツグミの親戚の誰か……例えばお父さんとかお父さんのきょうだいが趣味でやってたんだろうか。夏休みの滞在中、とかに。
いや、そんなことよりも。
アリサはやっぱり記録を残していた……
しかも「1日たたないと字が見えない蛍光ペン」で。
ノートのあいてる方のページ、ではなく一行おきにびっしりと書かれている通信記録の行間の方に。
「日曜日」「月曜日」……と、その曜日に当てはまる曜日の空行に、起こった出来事と理論派のアリサが精一杯考えた推理を。
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