金曜日 #3

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(中身が思いっきりグロい物だったらどうしょう……) この状況だし、そんな不安も頭を掠めたが……、階段の上で無為無策でずっと震えてるよりはマシかもしれない。 私達は気をつけながら恐る恐る石段を降り、ボートの上の荷物を回収した。 水面からは湿気っぽくカビ臭いに混じって、気のせいか血の臭いがする。 私達は素早く水のそばを離れた。 ダンボール箱は思いのほか軽かった。 そして銀皿からは……… 何かの料理が入っているらしく、温かくて美味しそうな香りがした。 わずかな乾パンと水さえもなくなり飢餓状態に耐えていた私達には、理性が飛びそうなほど魅力的で刺激的だった。 銀の蓋を取ったら、出てきたのは四人分のリゾット。 私達は歓声をあげた。 クロスの掛かったダンボール箱を食卓代わりに、同じく四人分用意されていたグラスの水で喉を潤すと、ひたすら無言でリゾットにがっついた。 そんなの食べたことないけど……、きっと三つ星レストランの一流シェフの味、とか……そういうレベルの料理だと思った。 水と乾パンの単調な味でしのいだ、一週間近い慢性的な飢餓。 それと比べたら、離乳食のように柔らかく煮込まれた米と野菜と魚介類、上品な薄味の調味料と香辛料の極上のハーモニーは言いようもなく絶品だ。 食べながらみんな、泣きじゃくっていた。
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