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しかし、私達の身にはいつまで経っても何事も起こらなかった。
ただでさえ底冷えのする地下室に、ただならない冷気が充満する。
「「「………………」」」
私達は恐る恐る身を起こして、辺りの様子をうかがった。
轟音の正体は、おびただしい量の水が流れ込む音のようだった。
「ダム…決壊したってニュースで言ってたよね?何日か前……」
いや、無線機でアリサが誰かに聞いたんだっけ………。
「いや!まだ死にたくない!」」
「ウララ、サヤカ、落ち着いて!」
ここに至って、意外なほど平常心なアイミに感心する。
……いや、むしろ少し怖かった。
アイミが非常灯で辺りを照らす。
倉庫は無事だけど、ワインセラーは瓦礫や友の遺体を飲み込んで……あっという間に深い水の底だった。暗闇でどす黒く見える水が澱んで渦巻いている。おそらくあの色は、血とワインの混じった暗赤色に違いない。
このままでは、倉庫も数分後には水没するだろう。
「避難しなきゃ!階段の上!」
「イヤだ!チアキが死んだ階段なんて、縁起でもない!」
「死んだ子達が、私達を連れに来たのよ!どうせ助からない!」
「落ち着いてったら!諦めちゃダメ!」
私とアイミはパニクるウララとサヤカを引きずるようにして、リビングに続く階段の上段に座らせた。
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