第9話

救済者

私は本能的に洋平さんの手を払い、一歩後ずさった。

何かがおかしい。

ううん、何もかも。
じわじわと押し寄せてくる違和感と疑心。

「どうしたの？」

洋平さんが人当たりの良い笑顔を浮かべてその一歩分を歩み寄るのだが、目の奥が全く笑っていない。

私はまた距離を置く。

この人…もともとこんな気持ち悪い笑い方をする人だっけ？

それに、この話し方。

「君は誰よりも強く賢かった。だから生き延びた。そうだろう？」

声が違っていても、この口調……物腰は柔らかいのにどこか冷たくて居丈高で逃げ場を与えない、そんな話し方をする人物を私は知っていた。