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「罪悪感に捕らわれるのは愚かだ。君はもっと自分を誇りに思っていい。だって君は……」
必死で距離をとる私に構わず、一歩、また一歩と詰め寄る洋平さんはにこやかな表情を崩すことなく話し続ける。
どん、と背中にリビングの壁が当たった。洋平さんはさっき握手した時の距離を保ったまま歩を止めた。
恐怖に呑み込まれまいと真っ直ぐ洋平さんの瞳を睨みつけるように見つめる。
瞳を見ればその人がわかる、というけれど。
この人の瞳は冷たい理性を宿して無感情に静まり返っている。狂気の片鱗も感じさせないのが却って不気味だ。
「君は紛れもないゲームの勝者『Survivor』なのだから」
「『救済者』………!」
口の中がヒリヒリヒリするほど乾いていた。
「『救済者』…つまり、ゲームの首謀者はあなたなのね…小林洋平さん!!」
喉の奥に血の味を微かに感じる。涙の味も。
泣いてはダメだ。
冷たい水底で死んだツグミ、チアキ、アリサ、ルイ、サヤカ、そしてアイミ……、6人分の無念を背負い、私は今、真の「敵」と対峙している。
「人殺し……!」
目の前の「洋平さん」は動じることなく、私の言葉を受けて口を開いた。
「その呼称はどれも正確とは言えない。
『小林洋平』その名ですら、私の本来の名前ではない」
「じゃあ、あなたは一体何者なの!?」
「そうだなあ…」
目の前の「洋平さん」は正体不明の笑顔を消した。
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