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土曜日、私達もここを通ってツグミの別荘に入り、それぞれにゲストルームをあてがってもらった。
「スゴい!映画に出てきそうな豪邸」
「見て、あの螺旋階段!シンデレラとかロミオとジュリエットにでてきそう」
「こんな所に泊まれるなんて、お姫様になったみたい」
「こんな所にしょっちゅう来れるなんて、いいなぁ、ツグミは」
口々にはしゃぐ庶民丸出しの私達に
「古臭くてだだっ広い、ってだけで使いづらいわよ。ま、ホテルと違って大騒ぎしても怒られないからマシってだけ」
と、ツグミがさらっと言い返した。
……ツグミってホントにお嬢様なんだなぁ……
・・・・・・・・・・・・・
ほんの数日前の、無邪気なやりとり、はしゃいでいた友人達。
みんな、いなくなってしまった。
そして真っ暗な玄関ホールには夜目の利くようになった私と、友達の命を奪った張本人である「彼」の二人だけ。
周辺にも他の人の気配は感じられない。
突然稲光が走り、雷鳴が耳をつん裂く。
恐怖と悲しみで感覚が麻痺したのか、何も怖いと感じられなかった。
明かり取りから漏れる雷光をスポットライトに、「彼」がゆっくり螺旋階段を上っていく。
気持ちの中では後から階段を駆け上って「彼」に掴みかかり、頬の一発でも叩いて問い詰めたかった。
しかし私は今度こそ体力の限界のようだ。
「教えなさいよ!あなたは一体何者なの!?」
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