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私は聞き覚えある声に向かって、最後の力を振り絞って動かない手足を死に物狂いで動かし、再び水の上に顔を出した。
密室で水責め状態の闇の中、一部が崩れた天井の分空間ができていて、やっと呼吸ができた。
(……助かった?)
私は声のする方に顔を上げた。
天井のあったさらに80センチほど上、畳一畳ほどの錆びた四角い枠に鉄製の檻のようなものがはめられていた。
その上に四つん這いになって、何とか檻をあけようとしている少女の姿。
私は胸が一杯になって、また涙が溢れた。
「ナツ!ここからすぐ出して上げるからね!頑張って!」
「ウララ!!生きてたんだね……!!」
檻は見た目以上に古いものだったらしく、ウララがどこからか持ってきたバールでこじ開けたら留め具らしきものが簡単に壊れた。
ウララのどこにそんな力があったのか。
バールを「てこ」のように使い、ギギィ……と金属の擦れる不快な音とともに檻に女の子一人やっと通れそうな隙間ができた。
ウララがバールをつっかい棒にして、手を差し伸べてくれた………これが生き延びる最後のチャンスだ。
檻の隙間をくぐるとき、鉄錆臭い破片まみれになったが、そんなのかまやしない。
「ナツ!ナツ!よく生きてたね!」
「ウララこそ…!よかった、死んじゃったかと思ってた」
私はずぶ濡れのままウララに抱きついた。歯の根があわないほど震えているのと涙で言葉がなかなか出てこない。
「……っウララ…、ありがとう…ありがとう」
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