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ウララは手のひらサイズのLEDライトを持って来て、バスルームまで案内してくれた。
温かいシャワーを浴び、ウララが貸してくれた乾いた衣類に身を包むと、凍えきっていた指先にまで温かい血が巡っていくのを感じる。
(助かったんだ)
じんわりと実感する一方で、
(もしかして、私、もう死んでるのかも?)
という考えが浮かんできて仕方ない。
私は再びさっきの部屋に戻り、暖炉の前に腰掛けていた。
やはり暖炉の火が眩し過ぎて、ウララに借りたパーカーのフードで顔を覆いながら肘掛け椅子にうずくまる。
「これでもっと暖まるよ」
ウララがまるで勝手を知った主のように、キッチンからホットミルクを運んできてくれた。
(………………)
ウララはそのまま私後ろのリビングセットのテーブルにマグカップを置いた。
「ふぅ……ふぅ……ナツ、猫舌だもんね」
ソファに腰掛け、自分の分のミルクを飲み始める。
「ウララ、ありがとう」
暖炉の側の時計が一つ、ボーン……と鳴る。
ここが地獄でないのなら、私達はもう天国にいるのに違いない…ウララには、わかっているのだろうか。
だってここは、私がよく知っていて、この世に存在しないはずの場所。
ツグミの別荘のリビング。
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