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「『犬笛』というのを知っているかな?
犬は嗅覚が鋭いだけでなく、人間には聞き取れない高周波の音を聞き分けられるし、それを利用してトレーニングすることも可能だ。
犬ほどではないが、人間…特に若者の中には、平均より高い周波数の音を聞き取る能力がある者がいる。
君達の中では、チアキがそうだった」
そうだ。
何年か前、「若者にだけ聞こえる着信音」「モスキート音」なるものが話題となり、皆で遊んだことがある。
確か、一番耳がよかったのはチアキだった。
「チアキは中学生の時分、家の近くの公園であまりガラのよろしくない連中と毎晩夜中まで騒いでいたようだ。
たまりかねた町内の大人達が、ある時間になると時報のチャイムから高周波音を鳴らすようになり、チアキ達はその公園に寄り付かなくなった……聞こえる者にとっては、快適な音とは言い難いからね」
中学の荒れていた時期。チアキにとっても、辛い思い出のはずだ。
「そんな……人のトラウマを利用して、おびき出して殺すなんて!酷い……!」
「ゲームだから、ルール通りにやらせてもらっただけだ。
最初から棄権して自らターゲットになる者がいるとは思わなかったが。
それとも僕がナメられていたのかな?彼女は武術では敵なしの猛者だったしね……
まぁ今更どちらでもいいことだが」
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