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「中でも僕が気に入ったのは、実家と絶縁している借金に困ってる一人の少女。
コンプレックスの反動で自己評価が高く、自分を過少評価した事務所や芸能界に恨みを抱いているのが言葉の端々に見受けられたからね。
僕は彼女に整形手術を受けさせ、『芹澤家の令嬢に成りすまし、芸能界での成功と財産を手に入れる』という、これもダミーのプランを持ちかけた。
僕は“セリーナ”の乗っ取りを企む一社員、という設定で。
この別荘が無人の間、ウララに送らせたツグミの動画を元に、徹底的に本人の癖や所作、口調や行動パターンなどを叩き込んだ。
もちろん芹澤家令嬢の身替わり、なんて無謀な役割はハナから期待してなかった。
僕としては判断力の落ちた君達をさらに混乱させてゲームを盛り上げてくれれば十分だったんだが。
早々に見破られたところを見ると、文字通りクビにされても仕方ない、三流以下の素人だったということになるけど。
誰にも知られることのない舞台だが、ある意味彼女の人生では最も意義のある素晴らしい芝居だったと思うよ。
もっとも、僕の方は彼女の本名は忘れてしまったがね……」
ヒドい。
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