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「殺人鬼!!異常者!!私たちに何の恨みがあって、こんな非道いことを!」
悔しいがそれ以上にヤツを罵倒する言葉を知らない。代わりに喉から血が出そうな勢いで叫んだ。
「繰り返すけど、君達に恨みはない。ツグミにさえもね。
ただ、これから僕が生きていく世界は陰謀と蹴落とし合い…それこそサバイバルゲームそのものだからね。
だからこそ僕は人間の生の姿を観察したかった。原始的なエゴイズムと欲のぶつかり合い、信頼関係の壮大な崩壊……
そういう意味では被験者としての君達にはやや不満だがね。
しかし、最後まで理性を失わず勝ち残った君には敬意を表するべきかと思う。
これからの人生を平々凡々と、並の人間として送るには少々惜しい人材だ。
どうだろう、僕のパートナーとして、塵芥のように溢れかえる人類のうちほんの数人しか叶えられないような権力と栄光の頂点で共に輝いてみたくはないか」
「彼」は冷たく張り付いたような笑みを浮かべて、こちらに手を伸ばした。
彼は螺旋階段の上。
昇ってこい、という意味だろうか。
ふざけないで!と叫ぼうとしたが、喉がかすれて声にならない。
怒りと衰弱のせいで頭の中はぐらぐら、身体はふらふらだった。手すりに掴まりながらよろけ、そして気づいた。
右のポケットの、重み。
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