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私は、ウララの持ってきた誰かのパーカーを渡されるまま羽織っていた。
ウララかツグミの私物だろうか?それともサイズが大きめだから、チアキの…?
何となくポケットの中味を確かめようと外側から触れたら、指にチクリと痛みが走った。(……痛っ……!)
パーカーのポケット越しに人差し指を鋭利な金属が刺していた。
私は頭の隅っこでそんなことを考えながら、敵である「彼」を見上げたまま睨みつけたまま、決して目を逸らさなかった。
沢山じゃないけど、たぶん、出血してる。
(一体何、これ?)
私は無意識のうちにポケットの上から念入りに「それ」の形状を確かめた。
独特の螺旋形状の突起物、取っ手の凹凸は彫刻でも施してあるんだろうか。
(これ、ワインのコルク抜きだ……)
ツグミが最初の日に見せてくれたアンティーク品の中にあったと思う。
だけど、誰がどうしてパーカーの中にコルク抜きなんか?
たぶんそれは、今さら考えても一生わからないだろう。
借りたパーカーが血で汚れてるのが気になるが、誰のパーカーであろうがもう、返すあてもない。
私の心の中は怒りと悲しみが渦巻き、頭の中は一つの強い確信が占めていた。
(私が『彼』に協力する、と言ったら?
きっとルイやウララ達と同じ。裏切りを重ね、罪を犯した後、手駒の一つとしていつか無残に殺される…)
(では、協力しないと言ったら?
どうせこの場で葬り去るつもりだろう。他のみんなと一緒に…)
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