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暗闇と、精神的体力的限界の、さらに向こう。
天も地も、どこをどう打ってるのかもわからない。
雨音、雷鳴、地鳴り。
遠くから聞こえるサイレン。
視界の端に一瞬「彼」の姿がほの白く映り、そして全ての動きが止まった。
身体の全面と片頬に、冷たい平面を感じる。
私は身体じゅうに激痛を抱えて再び玄関ホールの冷たい床の上に突っ伏して倒れていた。
…まだ、生きてる。
もう片頬の頬を生温かい涙が伝う。まだ涙が残っていたのか、と、ぼんやり思う。
(そりゃあ…そうか…)
協力しろとの申し出に私は答えなかった。
だけど、友達を殺された女が殺気の籠もった目で階段を這い上がって来るのを見たら、普通の人でも復讐心や敵意しか感じないだろう。
(私…、お芝居が下手だなあ…)
「彼」は油断している、と見せかけて私が最後の力を使い果たすのを見届け、そして、突き落とした。
「君の答えには少なからず失望したよ。
残念ながら、お別れだ」
身動きもできず横たわる私の、遥か頭上。
稲光の中、「彼」がリモコンのスィッチのようなものをかざすのが見え、地面が不気味に揺れるのを感じた。
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