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その時、私はママといた。
私には慣れた明るさだけど、廊下から入ると病室はまだだいぶ暗いらしく男性の方は少し立ち止まってそろそろ入って来たが、女性の方はためらう様子もなくスタスタ私の方に歩み寄って来た。
「楠木奈津さんですね。私は警視庁の刑事で諫早響子。こちらは部下の芦田です。少しお尋ねしたいことがあって参りました。主治医の先生からは短時間なら、と許可は頂いております」
事情が事情だけに私の病室はパパとママ以外はまだ面会謝絶になっていたはずだった。
ママの方が先に声をあげた。
「刑事さん、ですって!?奈津は酷い目に遭って、生死の境をさ迷ったばかりなんですよ!それになぜ、わざわざ刑事さんが?」
「もちろんお母様に立ち会っていただいて構いませんし、奈津さんに無理強いもしません。ただ、私達が参りましたのにもそれなりの事情がございまして」
諫早刑事は私とママの目を代わる代わる見つめながら、てきぱきと答えた。
ママは不服そうだったが、私はいきなりの来訪者のキチンとした感じに好感が持てた。
「大丈夫、ママ。私も自分に何が起こったのかきちんと聞いておきたいから」
そう、私は
救出されて意識を取り戻したものの、ツグミの別荘で起こった全ての出来事の記憶をなくしていたのだった。
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