帰還

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一般病棟に移ってしばらくして、ツグミの別荘が見舞われた惨劇について聞かされた。 私達が思い出作りに訪れたツグミの別荘のある集落が未曽有の土砂災害に見回れたのは、私達がツグミの別荘に到着した四日目…水曜日の未明だったという。 私達が到着し、バーベキューに興じた土曜日の深夜、天候が急変し麓の集落一帯に大雨洪水警報が出されていたのは事実だった。 三日目…火曜から水曜日にかけての深夜、麓の集落では防災無線でサイレンを鳴らし、高台の寺やへ公民館への避難をしきりに呼び掛けていた。 しかし、長年地元に暮らしていた人々にさえ予想もできなかった悲劇が起きた。 ダム湖のほとり、村を見下ろす高台で長年その歴史を見つめ続けてきた、古く美しい洋館… 村に縁の深い芹澤家の別荘がダムの決壊によって突然、跡形もなく崩れ去ったのだ。 その別荘に高校を卒業したばかりの女の子達8人が閉じ込められている…、などという事実は 未明のダム湖の決壊で集落が押し流されたにも関わらず、避難していたお陰で奇跡的に無事だった村の人々や、駆けつけた消防・警察の誰一人として知るはずもなかった。 しかし、私達が信じていた通り、「ツグミの別荘に泊まる」と告げられていた親達の何人かは、 現地の悪天候を知るや別荘とも娘の携帯とも連絡が全く取れないことを心配して警察に捜索願を出したり、現場近くの町に駆けつけたりしてくれていた。 水曜日の明け方にはいよいよ別荘への道も使えない状態になっていたが、親達の情報とツグミの両親の力もあって、直ちに救助ヘリが飛んだ。 ツグミが「内緒で計画」していたため、何も知らされていなかったツグミの両親や管理人の小林夫妻が それぞれの出張先や旅行先から急遽現地に合流したのは二日ほど後のことだったという。
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