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食い入るように結城君を見つめていると、彼の口から思いがけない言葉が発せられる。
『ところでさ、亜紀』
ネクタイを結び直しながら、結城君は恋人に目を向ける。
『椎名さんって、どんな子?』
え、……椎名?
今更だけど、椎名は私の名字。
フルネームは椎名夕美(しいなゆうみ)なの……
突然、自分の話題を持ち出されて、困惑する……
『ん?いきなりどうしたの?……まさか、椎名さんに気があるとか』
『ふ、何言ってるんだ。違うよ?明日、確か一緒に日直なんだけど……』
椎名さん、いつもおどおどしてるだろ?
『どう接していいかわからない……扱いに困るって言うか……』
ああ、やっぱりそんな風に思われてたんだ。
仕方ないけど…。
『え、そう?高校生にしては幼いけど、普通に可愛い子だよ。女子の間では……』
『そっか。男が絡むとぎこちなくなるよな』
『ふふっ、誰にでも人懐っこいひなたがそんなの気にしてるって珍しいね!まぁ何とかなるでしょー……』
居たたまれなくなった私は、美崎さんの台詞の途中で体の向きを変えた。
……早く。
早くここから離れよう!
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