結城 日向

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二人のいる教室から離れ、漸く遠ざかったところで一気に駆け出した。 階段を物凄い勢いで下って、人もまばらな一階へと辿り着く。 はぁ、はぁ…! 疲れた私は直ぐ傍の壁に寄りかかり、荒く息を吐き出す。 四階の静けさとは真逆の生徒達のざわめきが、酷く心地好く耳に届いた…… 『おかえりぃ~』 家に帰ると、大学生のお姉ちゃんがにこやかに出迎えてくれた。 『……ただいま…』 『夕美どうしたの?浮かない顔しちゃって』 童顔の私とは正反対の派手な顔立ちのお姉ちゃんは、男の人によくモテる。 街でもモデルにスカウトされるし、しょっちゅうナンパされてるんだ。 『お姉ちゃん、今日早かったね?』 『うん、先生の都合で最後の講義がなくなったのよ、ラッキー!』 今日は思う存分彼氏とデート出来るわ! 『そっかぁ、良かったね~…』 心ここにあらずの私に、お姉ちゃんはふと真面目な表情になって…… 『あんた、まだ男が苦手?……好きな人出来ない?』 珍しく不安げなお姉ちゃんに、首を傾げる。 私の行く末が心配だから、そんな心配そうな顔してるの?
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