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あの人は私にとって雲の上の存在。
いつでも綺麗な顔で爽やかに笑って、周囲の友達達を惹き付ける……
ずっと。
そんな彼を見つめてるだけで充分だった。
私には距離を縮められない、二つの理由があるから……
『相変わらず格好いいねぇ…』
間近から聞こえる微かな囁きに視線を上げれば、親友のアーちゃんこと矢沢朱美(やざわあけみ)がじっと一人の少年を見据えていた。
『うん、そうだね』
結城日向(ゆうきひなた)君……
ちょっと女の子みたいな名前の彼。
でも線が細くて繊細な雰囲気は、その名前ととてもマッチしているような気がしてた。
『あ……美崎さんが来た』
スタイル抜群の美少女が彼の元に近寄ると、暗黙の了解かクラスメート達が一斉に場所を開ける。
にっこり美しい微笑みを讃える彼女に、彼は心底愛しげな眼差しを注ぐ。
『おはよ、亜紀』
『うん、おはよ!ひなた』
二人が醸し出す空気は柔らかくて心地良い。
だから嫉妬の感情なんか、これっぽっちも沸いてこない。
始業のチャイムが鳴って、私は二人からそっと視線を外した。
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