Rise

2/7
前へ
/28ページ
次へ
───運命の翼に乗り、汚れなき空へ ───遥かなる明日へと、我は飛ぶ 幼い少女が澄んだ美しい声で歌いあげる。 其処に、少女の姉がピアノの弾き、年の離れた兄がギターを弾いていた。 「あっ!」 途中でピアノを弾いていた少女が声をあげ、指を止めてしまった。 それを受けて、妹は不思議そうに首を傾げ、兄は彼女の隣に着いた。 「アリス、どうしたんだ?」 「…ま、間違えちゃったの…。」 アリスは今にも泣き出しそうに、小刻みに震えていた。 「間違えても大丈夫ですわ!」 「イオンの言う通りだよ。別に何処かで発表したりしてるワケじゃないんだし。」 「でも…でも…。せっかく楽しくしてたのに、アリスの所為で…アリスの所為で……!」 アリスの目からボタボタと大粒の涙が零れ落ちる。 イオンはどうして励まそうかとあたふたし、トリルも少し困った顔をしていた。 しかし、その顔もほぼ一瞬で消え、笑顔を浮かべて、アリスの頭を優しく撫でた。 「間違えたからって、其処でやめちゃわないで、続けてみたら良いんじゃないかな?」 「……どうやって?間違えちゃったら、続けられないよ……」 「大丈夫だよ。えっと、さっきアリスは、こう弾かないといけないトコロを、こう弾いちゃっただろ?」 トリルは言いながら、ピアノを男らしい長い指で弾き、妹の間違いも容易く再現してみせた。 アリスは無言で頷きながら、トリルの指の動きを見ていた。 「此処から、次に繋げるには…。アレンジしちゃえば良いんだよ。こう言う風に。」 「わ!」 トリルのその助言とアレンジに、アリスは驚いた様子だった。 「凄い!お兄ちゃん、もう一回さっきのやって!アリスに教えて!」 「うん。良いよ。」 「私にも見せて下さいー!」 仲の良い三人の兄妹。 共通して音楽が好きな彼等は、いつも一緒だった。 「俺、この家を出ます。」 トリルが、この言葉を、両親に告げるまでは。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加