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氷の殺人鬼
「初めまして。ブランシェ・アルヌールと申します」
今年十七歳になる少女、ブランシェはこの家―、ヴィダール家に仕えることになっていた。
両親を流行り病で亡くし、身寄りがないところを公爵家である、ヴィダール家に引き取られたのだ………と、表向きになっている。
彼女の正体は、ヴィダール家と政治的に敵対している、ヌフシャトー家の殺人メイドである。
幼い頃からヌフシャトー家で殺人術を磨かれた彼女は、格闘技や棒術は勿論、合気道や銃器の扱いなども達人以上だ。
そんな彼女の二つ名は、『氷の殺人鬼』である。ブランシェが慈悲もなく感情もなく、対象者を確実に殺すからだ。
今回、なぜそんなブランシェが、敵の懐に飛び込むことになったのか。
それは、この国の王が殺人を禁じたからだった。
それまでは出かけの対象者を襲えばよかった。しかし、政治も知らない王のせいで、ヌフシャトー家はブランシェを使った、暗殺を目論むしかなくなったのである。
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