氷の殺人鬼

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一礼したブランシェは、乱れた長い黒髪を少しだけ直した。 切り揃えられた黒髪は腰の高さまであり、それでメイドをやっていけるのか、と言いたくなるほどである。 しかし、ヌフシャトー家では指摘されなかった。 そもそも、彼女の役目はヌフシャトー家の敵を抹殺することだし、メイドとしての仕事を完璧にこなしていたからだ。 「きみがブランシェですか。よろしくおねがいします」 そう挨拶したのは、ヴィダール家の若い当主、エレオノーレ・ヴィダールだ。 五歳で当主となり、その天才的な頭脳でヴィダール家を支えてきた、所謂神童である。 頭二つ分は小さいであろう、エレオノーレをブランシェは見詰める。 ―確か、今年で九つになるそうだが。 「わたくしのかおに、なにかついてますか?」 エレオノーレが、首を傾げて聞いた。 「あ、いえ。なんでもございません」 「そうですか。ならばよいのですが……」 幼いながらも見た目を気にする少女、エレオノーレ。 何となく、哀れな感じもする。 「……お嬢様。これからよろしくお願いします」 とりあえず、雇われる側の言葉をブランシェは言った。
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