第1楽章 「仕事」

21/21
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
願掛けもしたいし、名案かもしれない。 そう考えつつ、頭を上げる。 篶斗(あれ…) 上げると同時に向こうも話が一段落ついたのか、目線がこちらに向いたらしい彼と目が合う。 篶斗(あ…また、目が合った) すると、彼はほんの少しだけ笑うとまた他の社員と話の続きをし始める。 それは、本当にほんの一瞬のことだったし、彼も目が合ったから笑ったにすぎないと思う。 なのに、妙に腑に落ちないというか…心がざわつく。 篶斗(おいおい…落ち着けよ) 目が合うくらい、なんてことないだろ? …きっと、さっきの心の動揺でも残っていたんだ。 初めての大仕事だし、緊張の糸が未だにほどけきっていなくても不思議じゃない。 そう、理解は出来てる。 でも、それでも心は落ち着いとくれない。 篶斗(目が合った"だけ"だ) 別にキスされたり、抱きしめしめられたわけじゃない。 強いて言えば、ちょっと無愛想だなと思った相手が、少し笑っただけだ。 …しかも、いくら容姿が整っていても、相手は男。 たかが仕事相手だ。 …アガリすぎだろ、俺。 もっと心に余裕を持とうぜ。 いくらなんでも、そんな下らないことで、若干ボロつき始めた心をさらに乱してどうすんだよ…。 完全にテンパってるだけじゃねーか…。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!