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願掛けもしたいし、名案かもしれない。
そう考えつつ、頭を上げる。
篶斗(あれ…)
上げると同時に向こうも話が一段落ついたのか、目線がこちらに向いたらしい彼と目が合う。
篶斗(あ…また、目が合った)
すると、彼はほんの少しだけ笑うとまた他の社員と話の続きをし始める。
それは、本当にほんの一瞬のことだったし、彼も目が合ったから笑ったにすぎないと思う。
なのに、妙に腑に落ちないというか…心がざわつく。
篶斗(おいおい…落ち着けよ)
目が合うくらい、なんてことないだろ?
…きっと、さっきの心の動揺でも残っていたんだ。
初めての大仕事だし、緊張の糸が未だにほどけきっていなくても不思議じゃない。
そう、理解は出来てる。
でも、それでも心は落ち着いとくれない。
篶斗(目が合った"だけ"だ)
別にキスされたり、抱きしめしめられたわけじゃない。
強いて言えば、ちょっと無愛想だなと思った相手が、少し笑っただけだ。
…しかも、いくら容姿が整っていても、相手は男。
たかが仕事相手だ。
…アガリすぎだろ、俺。
もっと心に余裕を持とうぜ。
いくらなんでも、そんな下らないことで、若干ボロつき始めた心をさらに乱してどうすんだよ…。
完全にテンパってるだけじゃねーか…。
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