第一章 迷える追跡者

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「ありがとうございます……えっと、噂って?」 その言葉に少年がニヤッとする。 赤いジャケットを軽く整えると 「隠れ家はケーキはすごくうまいって人気なんだが、あそこに言った客がたまに行方不明になるっていうんだ。ま、都市伝説って話もあるが」 語りだした。 声も先ほどまでより心なしか嬉しそうである。 バイトに女子いるらしいし、今度碧根が行くように仕向けとくか……とか言ってるのは気にしないようにしておこう、碧根ってのが誰かわからないけど悪戯ならそこまで問題にもならないだろうしね。 にしても、行方不明とはね。 なんでそんなとこで行方不明に? そんな迷いやすいとこにでもあるの? 「行方不明……?」 「ああ、俺もよくは知らないけどな。ただ、大体行方不明者が出る前店員が何かを大量に買い込んでいくらしいな。詳しく知りたければ調べてみるといい。もういいか? 店に行かなきゃならんのだが」 すれ違う際にお礼を言って少年の来た方向へと向かう。 しばらくビルの間を抜けると人々のさっきまでいた場所からすれば騒がしいくらいの声がして少し安心できた。 さすがにもう迷わないよね。 左右の建物はだんだんと商店街特有の明るい色合いへと変わっていく。 えーと、ここら辺からでもわかるような大きな木、だよね。
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