288人が本棚に入れています
本棚に追加
夕方────
帰宅した智博が飛び込んで家に入ってくる音が聞こえた。
頓服薬のおかげか起き上がれるようになっていた俺は、ベッドから出てリビングの方へと歩いて行く。
キッチンで夕飯の準備をしてくれている思われる美智雄と智博が何か話しているようだ。
「風邪ぇー!?」
やや高い声で智博が声をあげる。
「なんで連絡くれなかったんだよ!俺、行く前に絶対連絡してくれって頼んだだろ!俺もう、心配で心配で……1日不安だったんだからな!」
「すまんすまん、ちょっとばかし……」
「忘れてたんだろ!」
リビングに入ると、怒る智博と困ったように小さくなっている美智雄が向かい合っていた。
「おかえり、智博」
「あ!パパ~、もう大丈夫なの?風邪だったんだって?」
俺を見た智博は、飛び跳ねるようにこっちへ来た。
「心配かけてごめんよ。一応は風邪って診断なんだけど、念のため明日くらいまでは用心なんだ。あんまり俺に近寄ると智博も」
「ええっ!?俺、ちゃんとマスク着けてるのに?傍に行っちゃダメなの?」
小さい時を思い出すような、悲しい顔を智博は見せる。
最初のコメントを投稿しよう!