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「つい……た」
ついにトオルは約束したこの公園までたどり着く事が出来た。しかし、そこから見える景色は現実の物とは思えなかった。
第一展望台の少し上から燃えながら折れる東京タワー。煙りと炎に包まれるビル群。トオルが好きだった独り占めしていた景色は何もかもなくなっていた。
「なんで……こんな……。……!」
「トオルさん」
もう直視することが辛く、目に涙を浮かべてトオルは東京タワーに背を向けた。
その時、トオルの体は何者かによって包まれた。同時に一番聞きたかった声が聞こえてきた。
「太一……さん……」
空からハラハラと雪が舞い降り始めた。この二人の再開を祝福するように。
「トオルさんやっと会えた」
優しくも力強く赤井がトオルを抱き締める。会いたかった、寂しかった。怖かった。色々な感情が込み上げ言葉にならず、ただ抱き締められながらトオルは涙を流した。
「ねぇ、太一さ「トオルさん、この プ レ ゼ ン トはいかがでしたか」
「えっ?」
ようやく落ち着き、赤井に話しかけようとしたとき、彼は被ってそう言った。
「初めてあった時を覚えてますか?あの時、トオルさん言いましたよね。クリスマスなんて滅茶苦茶になっちゃえ!って」
「えっ……なにを……?」
この人は何を言ってるんだ。なにを。
「実はぼく、サンタの一族なんです。1つの国につき一人の願いをクリスマスに叶えるのが役目です。今年は貴女の願いを叶えました」
「なに、なに、なにを…………」
全部は私のせい?本当にサンタ?公園であったのも偶然じゃない?なにがおきてるの、なにが本当なの。ーートオルの正気を保つためのものが全て消え去った。
赤井太一ーサンタに抱き締められたまま、トオルは呆然と涙を流した。
今日はクリスマス。一年に一度キセキの起こる日。
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