私の願い

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ーーーー  あれから約一週間。大事なのは気の持ちようということだったのだろう。翌日から彼女は本当に変わった。仕事は驚くほど捗り苦など全くなかった。部下のミスに対してもただ怒るだけではなく、次はミスをしないためのアドバイスやフォローもそつなく出来た。  今までは退社後は直帰という毎日だったが、彼女の柔らかくなった空気を感じてか、部下達や同僚から飲みに誘われるようにもなり、それまで耳に入ってこなかった女同士のわいわいした会話も楽しめるようになった。本当に本当に楽しい。 「……ふぅ、仕事しながらでもこんなに楽しいことが出来たなんて知らなかったなぁ」  一週間のことを思い出して、つい笑みがこぼれる。トオルはホットココアを握りながら南西にある東京タワーを見上げた。  時間は午後10時。寒さが身に染みる。しかし彼女はこの場所が好きだった。  平日のこの時間は他に人はいない。ドレスアップされたタワーの景色を独り占めすることができるようで心地よく、入社時代からこの公園には通ってる。  今までは無意識に寂しさを埋めるためにかよっていたが、今は楽しさを実感するためにいる。 ーーまた何処かでーー  そうしていると、ふと彼の言葉が浮かんだ。 「やっぱ。あの人のお陰かな」  偶然、自分をアンケート対象者に選んでくれた彼。あの時あそこを歩いていなければ、ため息をついていなければ、自分への声と気付かず振り向かなければ、どれか一つでも起こっていたら会うことはなかっただろう。  感謝してもしきれない。恋……と呼ぶには早すぎるかもしれないが、それに近い感情がトオルの仲にはあった。  もう一度会いたい。あの人の言葉通りまた何処かで。 「赤井太一さん……」 「はい?どうしました?」
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