2人が本棚に入れています
本棚に追加
「えっ……?」
突然の声に驚き、バッと後ろを向く。ーーーーいた、彼が。その髪色、肌、声、雰囲気。自分を変えてくれたあの人が、思いこがれたあの人が。
「えっ、いや、あの……」
驚いて言葉が続かない。なんでここに?いつから?どうして?聞いてた?来た理由は?次々に考えが頭を巡る。言葉になんてなるわけがない。
「どうも、トオルさん。いま、僕の名前呼びましたよね?」
あっ、仕事口調じゃない。僕って言うんだ。ていうか名前覚えてくれた、下の名前で呼ばれた。
まだまだ混乱が続くトオルは変なところにばかり気がいく。頭が追い付かない。
な、なにか言わなきゃ、そう思いつつボーッとしか出来ない。
「……こ、こんにちは!あ、赤井さんはどうしてこんな所に……!?」
黙っているままでは失礼だと思い頑張って言葉を発するが、キョドりを隠せない。
「えっ、あー……。夜景が綺麗だなぁと思っていたら偶然ここを通りまして。そしたら私の名前が聞こえたものですから 」
あっ、仕事口調に戻っちゃった。とトオルは少し落胆した。知らず知らず目がハート型となっている。
その為か、赤井の少しの考えた素振りに気づくことはなかった。
ーーーー
「そうなんですか。それは私としても嬉しい限りです!」
ニコッと赤井が笑う。気になっているから呼んだ、等と本人に言えるはずもなく、名前を呼んだことには直接触れずにトオルは劇的に変わった一週間と、それが赤井のお陰であると話した。
「赤井さんもただお仕事をしただけなのにこんなこと言われるのもあれかと思いますけど、本当にありがとうございます」
照れ臭そうに笑いながらトオルが言う。
「いえいえ!なんか私も嬉しいですよ」
赤井が笑いかける。
最初のコメントを投稿しよう!