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「もし……あの……」
「どうしました?」
途端に下を向きもじもじするトオル。そんな彼女を見て、赤井は首を傾げ質問を投げ掛ける。
「も、もしなんですけど!もし……た、太一さんがクリスマス空いてたら、夕食でもどうですか……?……こ、今回のことのお礼として……!!」
色んな勇気を振り絞り食事に誘うトオル。最後が言い訳がましくなってしまったが、彼女としては最大限の頑張りだ。
今すぐ言い逃げしたい気持ちを抑え、赤井の返答を待つ。
「クリスマス……ですか」
「め、迷惑……ですかね…………?」
次第に声のトーンが下がっていくトオル。ついつい泣きそうになるのを堪える。
「いえ、お誘い頂いて嬉しいです!是非行きたいです」
最初の迷った素振りとは裏腹に、赤井は快諾した。それを聞いてトオルの顔がみるみる明るくなっていく。
「じゃ、じゃあ……六時半にこの公園でどうですか?」
トオルにとって社会人になってからの心の憩いの場であり、赤井と再び会えた場所であるこの公園。彼女の中では既に最も大事な場所となっていた。
「六時半ですか……うーん。いや大丈夫です!」
「何かあるんですか……?」
「ちょっと、大事な仕事が。でも、頑張れば早くおわるので大丈夫です!」
いつものニコリとした笑顔で返す赤井。トオルはこの顔を見る度に安心を感じた。
ーーーー
その後、二人は時間を忘れて他愛のない会話をしていた。
後一時間で草木も寝るかという時間、ようやく二人の会話に一段落ついた。
「……流石に寒さがこたえますね。今日はこの辺にする?」
「そうしようか」
トオルからの提案に赤井が乗る。今までの会話ですっかり打ち解けた二人は既にため口となっていた。
「じゃあ、クリスマスにここでね」
「うん、楽しみにしてるよ」
内心で別れを名残惜しみながらも、トオルは赤井と別れて帰路についた。
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