私の願い

9/10
前へ
/10ページ
次へ
ーーーー公園まで残り約三百メートル 「……はぁはぁ、もうなんで、なんでこんなことに……」  新宿駅を出てから一時間強。トオルは体力・精神力共に限界をむかえていた。手や足は所々擦りむけており、会社で来ていたスーツは途中で暴漢に襲われ破れたので今日のデートの為に持ってきた私服へと変わっていた。その私服にも所々血が付着している。  この血は、トオルのものではない。トオルの目の前で爆発に巻き込まれ亡くなったり、物につぶされて亡くなった人の血や、道路のぬかるみに滑ったかと思うとそれは吹き飛ばされた遺体の一部でその血がついたりしたものだ。こんな混乱の中でトオルをいきなり襲い、欲を満たそうとした男も馬乗りになっているところに爆発でとんできた瓦礫の破片が頭部に当たってその場で倒れた。  こんな異常が立て続けにおきて正気でいられる方が少ないだろう。赤井に会うという目的さえなければ、トオルはずっと前に正気を失い立ち止まり。爆発か何かに巻き込まれ死んでいただろう。 「あと……もうすこし……」  約束の場所まであと百メートルほど。ほとんど死にそうになりながらも、トオルは一生懸命歩いた。  そういえば会社のみんなは大丈夫だろうか、大学の友達は無事だろうか。目的地が近づいたことで他のことを考える余裕をほんの少し出来た。  あのベンチまで残り数十メートル。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加