第1話 現れた開祖様

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・・・・ 「じゃ、また明日な。」 「おう!」 校門前で涼と別れる。あの後結局話が弾むことはなく、授業が終わるころには涼もすっかり忘れたようで、部活にも入ってない俺たちは早々に帰路に就いたのだった。 「さて、さっさと帰るか・・・」 そう呟いて、人通りの少ない帰り道へすたすたと歩き始める。同時に、あの話が脳裏に浮かんできた。 『その密教、HがOKだったんだと!』 「はー、そりゃーおめでたいことで・・・」 鼻で笑い、嘲るようにつぶやく。 俺は宗教は全然信じてない。新興宗教はもとより、三大宗教も同じだ。ただひたすらにくだらない。あんなもん、なんの役に立つってんだ。 「おっと、いけね。」 ひとりでにそんな言葉が出る。宗教となると、どうしても嫌悪感がわく。失礼な話だが、まあ、いろいろあるのだ。 「にしてもあのバカ、なーにが立川流だよ・・・」 言いながら路地を曲がろうとしたとき、ふいに声がした。 「すまん。そこの少年。今、立川流と申したか?」 「え!?」 急いで振り向くと、そこにはぼんやりと人影があった。暗くて顔はよく見えないが、声とシルエットからして女の人だろう。よく見ると周りの風景に似合わない、葬式で見るような、あの僧の着物を着ていた。 「あー、えっと・・」 あの人は・・尼さんか?うわ、聞かれてたか・・なんか恥ずかしいな・・。 俯いて頭をかいていると、 「お主、立川流を知っておるのか!?」 「わ、わっ!?」 急に大声を出し、駆け寄ってきた。な、なんだ?立川流が一体どうしたんだよ・・・ 「教えてくれ、立川流は今どうなっておる!どこまで知れ渡っているのじゃ!?」 「ちょ、な、なんですか!」 いきなり肩を掴まれゆすぶられる。訳がわからず俺が混乱するのを見て、女の人はハッとなり、こういった。 「す・・すまぬ。初対面の者に、なんと失礼な・・」 「ああ、いえ・・」 正直失礼を通り越して意味不明だったのだが、素直に謝ってきたので、俺は何も言わなかった。 「あの・・あなたは、一体?」 いまだ申し訳なさそうにしているその人に向かって、俺は聞いた。とりあえず何者なのかを聞きたい。 「ああ、我は、連念と申す。 我の生み出した真言立川流の様子を見届けようと、降りてきた次第じゃ。」
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